不動産コンサルタントとは?気になる業務内容を徹底解説します

「不動産コンサルタント」という職業をご存知でしょうか?顧客に対し、中立的な立場から不動産の専門家として、アドバイスや提案を行う人のことを指します。
不動産の購入や売却、または活用や投資を検討したときには、多くの方は不動産屋さんに相談すると思います。しかし、一般的な不動産屋さんは不動産の売買や賃貸を行うのが仕事です。そのため、本当は不動産を売却する必要のない顧客に対しても売却を勧めてしまうケースもあります。不動産の知識が乏しい一般の顧客が不動産について的確な判断をするのは困難です。そのようなとき、不動産コンサルタントは、仲介業者とは全く異なる立場から考えて、顧客にとって最適なプランを提案して問題を解決します。
今回の記事では、不動産コンサルタントの業務内容や報酬について徹底的に解説していきます。

1、不動産コンサルタントとは

不動産コンサルタントは、中立的な立場から顧客に寄り添い、不動産に関する問題ごとを解決する、不動産の専門家です。多くの場合は、個別の不動産が抱えている問題を解決します。また、不動産以外の問題を抱えている顧客に対して、不動産を活用した解決案を提案することもあります。例えば、不動産投資を考えている投資家に対して、市場調査やレポーティング業務を行います。また、資産家の資産のポートフォリオの見直しを行い、財産の組み替えを行うのも重要な仕事です。不動産コンサルタントの業務範囲は幅広く、多岐に渡ります。
しかし、現在の日本では、まだ不動産コンサルタントの認知度は低いといえるでしょう。ここでは、不動産コンサルタントの実態について解説していきます。

(1)不動産コンサルタントになるには

不動産コンサルタントには、どのような人物がなれるのでしょうか。じつは不動産コンサルタントは、誰でもなれるわけではありません。一定の要件をクリアした人が「公認 不動産コンサルティングマスター」という資格を取得し、不動産コンサルタントを名乗ることになります。経営コンサルタントや営業コンサルタントなど、様々なコンサルタントが日本にはありますが、その多くは、資格を必要としないコンサルタントです。言ってしまえば、「名乗ったもの勝ち」みたいなところもあります。しかし、不動産コンサルタントになるためには、公認  不動産コンサルティングマスターの試験を受験し、合格した上で必要要件をクリアし、初めて名乗ることができます。

(2)公認不動産コンサルティングマスターとは

不動産に関する資格には、国家資格から民間資格まで様々です。公認 不動産コンサルティングマスターは、民間資格ではありますが、国土交通省に登録して実施する登録証明事業の認定資格です。

公認不動産コンサルティングマスターになるには、試験に合格し、さらに一定期間の実務経験が必要です。このことからも、公認 不動産コンサルティングマスターの有資格者は、不動産実務に関わる人間として、一定の知識や実務経験が担保されているといえるでしょう。

また、公認不動産コンサルティングマスターになると、不動産関連の業務を行う上で必要な人的要件となります。具体的には、投資家に対して投資の助言やアドバイスを行う「不動産投資顧問業」を開業する際の人的要件であったり、不動産特定共同事業を行う際の「業務管理者」としての要件など、不動産関連の業種において重要な位置付けの立場といえます。

(3)公認不動産コンサルティングマスターになるには

公認不動産コンサルティングマスターになるには、公益財団法人 不動産流通推進センターが開催している試験を受験し合格する必要があります。受験資格として、「宅地建物取引士」「一級建築士」「不動産鑑定士」などの国家資格を有していないと受験をすることができません。試験合格後、各資格での5年間の実務経験を経ていることが認められて初めて、不動産コンサルティングマスターとして登録することができます。このように、公認不動産コンサルティングマスターは、不動産関連の一定の国家資格を有し、それぞれの資格で5年以上の実務経験が必要であるため、不動産業界の中のプロフェッショナル的な位置付けといえるでしょう。

(4)不動産コンサルタントはどこにいる?

公認不動産コンサルティングマスターは、不動産会社、不動産鑑定士事務所、建築設計事務所などに在籍していることが多いです。もちろん、私たち高野不動産コンサルティング事務所のように、不動産コンサルティング事務所として独立して不動産コンサルティング業務を専門的に行なっている企業もあります。
不動産コンサルタントごとに、得意分野や対応エリアは異なりますので、必要に応じて検索してみるとよいでしょう。公認 不動産コンサルティングマスターは、不動産流通推進センターの検索ページから探すことができます。依頼をご希望の方は、このページから検索してみましょう。

https://www.retpc-consul.jp/sch/

引用:公認 不動産コンサルティングマスター検索ページ
(当事務所でも公認不動産コンサルティングマスターが在籍しております。当事務所へのご相談・お問い合わせはこちらから)

2、不動産コンサルタントの業務内容

不動産コンサルタントの業務内容について解説します。不動産の仕事というと、一般的に売買や賃貸、買取などをイメージされる方が多いかと思います。しかし、不動産コンサルタントの業務内容は全く異なります。まだまだ認知されていないからこそ、具体的な業務イメージがつかない方も多いのではないでしょうか。

ここでは、不動産コンサルタントの業務内容の一例をご紹介していきます。

(1)不動産についてのアドバイス(売買や賃貸)

不動産コンサルタントのメイン業務として、顧客が不動産を売買または賃貸する際の助言やアドバイスがあります。例えば、住宅を売却する際、売却価格は不動産仲介会社に聞くことが一般的でしょう。しかし、不動産仲介会社は不動産の売買をするのが仕事であるため、いくらが適正価格か、というよりも「いくらなら売却(仲介)できるか」ということに重点を置くことが多いです。

したがって、顧客目線で、「いつ」「いくら」で売却するのがベストかという提案をすることはほぼありません。不動産コンサルタントは、顧客の目線にたち、市場動向を踏まえてたうえで適正な価格と売るタイミングを提案します。ときには、売りたいというお客様に対して「今は売り時ではないから待ちましょう」と提案することも珍しくありません。

(2)不動産の有効活用の提案

土地の所有者が土地の有効活用を検討した際、誰に依頼するのが一般的でしょうか。アパート建築会社の営業マンでしょうか。近所の不動産会社?それとも、日頃お世話になっている会計事務所でしょうか。

建築会社の営業マンはアパートを建ててもらうのが仕事です。不動産会社は土地を売却するのが仕事です。会計事務所に関しては、税務のプロではあるものの不動産のプロではありません。したがって、その土地にアパートを建築するのが最適かどうかを判断することはできません。

それでは、その土地の最適な有効活用案は誰が考えるのでしょうか。答えは1つで、所有者自身なのです。数千万円から数億円になるような大切な資産の活用方法を所有者自身が判断しなくてはならないのです。

このような不動産の有効活用においても、不動産コンサルタントは活用方法について適切な提案を行います。近隣市場や金融動向、もちろん賃貸マーケットの市場を踏まえた上で最適なアドバイスを行うことができます。

(3)投資分析やマーケットの調査

不動産コンサルタントは、不動産投資を既に行なっている、またはこれから始める方に対して、投資対象の分析やマーケットを調査して報告します。

検討している不動産の賃貸相場はもとより、近隣環境や再開発した際の活用方法などについても検証します。様々な観点から不動産を分析し、当然ですが、将来起こり得る空室リスクや滞納リスクなど、不動産投資を行う上で重要なリスクについても検討し報告します。

(4)所有不動についての分析、助言

保有不動産が、自己使用の住宅以外にも複数ある方は、定期的に所有不動産の見直しを行うことが有効です。不動産を取り巻く環境は日々変動しています。ときには、資産の組み替えを行い、より資産性が高く、収益力も高い不動産に変えていく必要があります。新たに物件を買わなくても、資産の組み替えを行うことで収益力がアップする可能性もあります。

当事務所では、不動産顧問サービスをご提供しています。月に一回の面談をベースにして、常に顧客の所有不動産が最適化であるように、日々見直しを行い分析や助言を行なっています。

(当事務所の不動産顧問サービスはこちらから)

(5)相続対策についての相談や提案

不動産をお持ちの方にとって、非常に重要な問題が相続対策です。不動産は現金や有価証券などの他の資産と異なり、実際の評価額を正確に把握するのは難しいものです。そのため、資産の中でも不動産の割合が多い方は、実際のご自身の資産総額を把握していないことも多々あります。そうすると、いざ相続が発生した際に思わぬ相続税が発生し、納税資金が間に合わなくなるという事態も起こり得ます。相続税が支払えないと、最悪の場合、土地を手放すことになってしまいます。相続は事前の対策が肝心要です。いざ相続が発生した際に困らないよう、不動産コンサルタントに相談して、早め早めの対策をしておきましょう。

3、不動産コンサルタントに依頼するメリット

コンサルタントは小売業などとは異なり、目には見えないサービスです。それゆえ、不動産コンサルタントに依頼する価値なんて本当にあるのだろうか?と思う方もいるのではないでしょうか。ここでは不動産コンサルタントに依頼することで得られるメリットを解説します。

(1)中立的な立場からのアドバイスを受けられる

不動産コンサルタントに依頼する最大のメリットは、不動産に関する課題を、中立的な立場からの専門家としてのアドバイスを受けて解決できることです。不動産仲介会社や、建設会社などは、仲介や建設などの業務の受託が前提にあって相談を受けていることがおおいため、どうしても提案内容が偏ってしまいます。

しかし不動産コンサルタントは、コンサルティング、つまり企画提案や調査自体が業務範囲となりますので、利害関係にとらわれずに顧客にベストな提案をすることができます。もちろん、様々な角度から検証した上で、売却した方がいい、あるいはアパートを建てて節税効果を狙ったほうがいいと提案する場合もあります。しかし、顧客にとって今は不動産を動かす時期ではないと感じたら、何もしないことを勧める場合もあるほどです。

(2)不動産業者に騙されず不動産を活用できる

不動産業者に騙されずに…というと表現が非常に乱暴ですが、不動産業者の意見を全て信じて動いてしまうと、相場より大幅に低い金額で物件を売却されたり、賃貸ニーズがないにも関わらずアパートを建てさせられたりすることがあります。これらは不動産業者が売買から発生する手数料や、アパート建築の建築費などを収益源としていることが原因です。ですから、アパート建築会社の営業マンがどれほど親身に話を聞いてくれたしても、行き着くところは「アパートを建てましょう!」なのです。このように、顧客にとってベストではない選択肢をとってしまうのも、はやり中立的な立場からのアドバイスがないから、といえるのではないでしょうか。

不動産コンサルタントは、不動産ごとに最大限価値が高まる活用方法を提案します。

(3)資産を長期的に保守し、増やし続けることができる

不動産を維持していくのは意外と難しいものです。不動産を所有していると固定資産税などの税金が発生します。また、その他にも建物修繕コストなど定期的に発生する経費もあります。複数の不動産を所有している人は、それらのコストも考えながら維持運用していく必要があります。

コスト以外にも、不動産の価値自体の変動についても意識する必要があります。金融情勢が大きく動く場面では、不動産の価値も変動する可能性が高いです。また、代々の地主の方は、相続時に多額の税金が発生し、納税資金が用意できないと、所有していた土地を手放さなくてはならなくなってしまいます。

当事務所の顧客の中にも、バブル期は評価額50億円ほどあった資産が、たった数十年で10億円を下回る経験をされた方も多くいらっしゃいます。

(4)士業との連携が可能になる

不動産コンサルタントは、日々顧客から様々な内容の相談を受けています。その中で、相続時の税金問題や、借地人との権利調整など、税金や法律などの複雑な事案も対応しています。そのため、不動産コンサルタントは、あらゆる士業や専門家とのネットワークを複数持っています。不動産コンサルタントに相談すると、自分で一から各専門家へ依頼する必要はなくなり、不動産コンサルタントを窓口として様々な士業に相談することができます。

参考までに不動産コンサルタントが通常繋がっている士業や専門家の代表例は下記の通りとなります。

弁護士
税理士
公認会計士
司法書士
不動産鑑定士
土地家屋調査士 など

4、不動産コンサルタントに依頼するには?

ここまで、不動産コンサルタントに依頼するメリットを解説してきました。それでは実際に不動産コンサルタントに業務を依頼するには、どのようにしたらよいのでしょうか。ここでは、不動産コンサルタントへの依頼方法や流れについて解説していきます。

(1)不動産コンサルタントを探す

まずは、不動産コンサルタントを探しましょう。顧客ごとに、抱えている不動産に関する悩みや、解決すべき課題は異なります。そのため、自分の問題について得意としているコンサルタントを探しましょう。探し方は、不動産コンサルティング事務所をインターネットなどで探すか、先述した不動産コンサルタントを検索するサイトから探してみてもいいでしょう。

コンサルタントごとに対応エリアや取扱領域が異なりますので、自身に合ったコンサルタントを見つけましょう。

(当事務所の不動産コンサルタントへの問い合わせはこちらから

(2)不動産コンサルタントに相談する

コンサルタントが見つかったら、相談のために訪問しましょう。多くの不動産コンサルティング事務所が、初回の相談料は無料に設定しています。相談の際に注意すべき点は2つです。

1つ目は、相談内容をできるだけまとめてから訪問しましょう。不動産コンサルタントにとって重要なのは、顧客ごとの課題を解決することです。そのため、何について悩み、解決したいのかが不鮮明だと相談自体も曖昧になってしまいます。

2つ目は、できる限り不動産関連の資料は準備しましょう。初回相談だけで終わったら場合、1時間程度の面談時間でアドバイスを受けなくてはなりません。口頭での説明よりも資料があった方が、不動産コンサルタントの理解も早まり具体的なアドバイスを受けられます。

(3)見積りの提示を受ける

公認 不動産コンサルティングマスターは、実際に不動産コンサルティング業務を行う際は、価格の提示、つまり見積書を提示して業務内容を顧客に説明することになっています。実際に受けるコンサルティング内容の確認を受けて、コンサルティングに関する費用を確認した上で、依頼するかどうかを判断しましょう。

(4)不動産コンサルティング契約の締結

提示された見積り金額で納得ができ、コンサルティングを依頼する場合は、コンサルタントとの間で、不動産コンサルティング契約締結します。ここでもやはり改めて業務内容の確認を行います。コンサルティング契約の締結が終わったら、コンサルティング業務がスタートします。

5、どうして不動産コンサルタントが普及しないのか

ここまで不動産コンサルタントに依頼するメリットを解説してきました。不動産を生かし、増やしていくためにも不動産コンサルタントに依頼するのは有効といえるでしょう。しかし、まだまだ日本では不動産コンサルタントという職業は認知されていません。重要な専門家であるにもかかわらず、どうして認知度が低いのでしょうか。最後に、これからの不動産コンサルティング業界のために、不動産コンサルタントが日本で普及していない理由を考えてみます。

(1)日本人の文化性(見えないものにお金を払わない)

不動産コンサルタントに限らず、コンサルタントという職業は、目に見えないサービスを提供しています。例えば、経営コンサルタントであれば、コンサルティングの結果、経営状況を改善するのが仕事です。営業コンサルタントは、売上を目的値まで引き上げるのが仕事です。これらのコンサルタントにすべて言えることは、依頼時には実現するかどうか分からないという点ではないでしょうか。依頼した時点では、問題が解決するかどうかの保証はないのです。世界の中でも日本人は特に「見えないものにお金を払うのは嫌い」な文化を持っている気がします。

(2)怪しい不動産コンサルタントが多い

不動産コンサルタントには、前述した通り公認 不動産コンサルティングマスターという資格があります。しかし、無資格で不動産コンサルタントやそれに類似する名刺で活動して売る人も少なくありません。例えば、区分マンションを販売するために、「不動産投資コンサルタント」と名乗ったり、アパートの建築営業をするために、「不動産運用コンサルタント」という肩書きを名乗っている人は多くいます。これら全ての方が怪しいわけではありませんが、先述してきた「不動産コンサルタント」とは大きく異なる仕事内容であることは言うまでもありません。実際に、「不動産コンサルタントを名乗る人から不動産投資を勧められて損をした」という話はよく耳にします。

(3)適切な不動産コンサルタントに相談しよう

不動産コンサルタントに依頼するには費用はかかりますが、重要な場面でのアドバイザーとして活用します。数千万円から数億円の資産を維持したり運用していくのに、自分の考えだけで出すのは危険ですし、リスクもあります。不動産の専門家である、不動産コンサルタント(公認 不動産コンサルティングマスター)を上手に活用し、大切な資産を維持し増やしていきましょう。

まとめ

不動産は非常に高額で、購入や売却は一生のうちでも数回しかない大きな出来事です。そのような重要な場面を、普段不動産に触れていない方がご自身で判断するのはリスクが高いといえます。

また、会社で不動産を所有する場合も同じです。不動産の取得により会社の運命が左右する場合もあります。そのような大事な局面では、ぜひ不動産の専門家である不動産コンサルタントをご利用ください。

高野不動産コンサルティング事務所では、不動産に関する様々なご相談を受け付けております。不動産の購入・売却・投資・不動産活用でお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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高野 友樹(不動産コンサルタント)

株式会社 高野不動産コンサルティング 代表取締役 / 株式会社アーキバンク 取締役 COO / 不動産会社にて600件以上の仲介、6,000戸の収益物件管理を経験した後、物流施設に特化したファンドのAM事業部マネージャーとして従事。 現在は(株)高野不動産コンサルティングを設立し、投資家や事業法人に対しての不動産コンサルティングを行う。 / 保有資格 ・公認 不動産コンサルティングマスター ・相続対策専門士 ・宅地建物取引士 ・賃貸不動産経営管理士 など