
不動産投資を始める際、「アパートとマンション、どちらを選べばいいのか?」という疑問は誰もが一度は抱えるものです。
それぞれに異なる特徴や魅力があり、物件の構造、入居者層、管理体制、将来の売却まで比較すべき点は多岐にわたります。投資家の目的や資金計画によって、どちらが適しているかは変わってきます。
本記事では、アパートとマンション投資の違いを丁寧に解説し、それぞれのメリット・デメリットを整理しながら、どんなタイプの人にどちらが向いているのかを考察します。
目次
1、アパートとマンションの基本的な違い

アパートとマンションは、不動産投資における代表的な物件タイプですが、その違いは構造や建築コストだけでなく、入居者の属性や維持管理の手間、収益構造にも及びます。
これらの基本的な違いを理解することは、投資判断を誤らないための第一歩です。ここでは主に「構造・コスト」「入居者層」「管理体制」という3つの視点から両者を比較し、それぞれの特徴をお伝えしていきます。
(1)構造・建築コストの違い
アパートは主に木造や軽量鉄骨造が多く、建築コストを低く抑えられるのが大きな特徴です。一般的に2~3階建てで建築されることが多く、初期投資が少なくて済むため、不動産投資初心者や資金力、担保力の低い人も始めやすい傾向にあります。
対して、マンションは鉄筋コンクリート(RC)造や鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造が主流で、耐震性・耐火性・防音性に優れていますが、その分建築費や購入費用は高くなります。また、マンションはエレベーターや共用部分の設備が充実している分、維持管理コストも高めです。構造の違いは、収益性や管理のしやすさ、耐久年数にも直結するため、投資戦略に応じた選択が必要です。建築や維持のコストはアパートの方が低いですが、得られる家賃収入はマンションの方が大きくなる傾向があります。
(2)対象となる入居者層の違い
アパートは1Kや1Rといったコンパクトな間取りが多く、主に単身者や学生、若年層の社会人がターゲットになります。賃料もリーズナブルな設定が多く、地方都市や郊外の需要と親和性が高い傾向です。
一方、マンションにも1Kや1Rは存在しますが、どちらかというと広めの間取りが多く、ファミリー層や高所得者層、法人契約の入居者が多いのが特徴です。これにより、入居期間の長さや退去リスク、修繕負担にも差が出てきます。長期安定収入を狙う場合はマンション、入居者の回転率が高くても高利回りを目指したい場合はアパートというように、投資戦略に合わせた判断が重要です。
(3)管理・メンテナンス体制の違い
アパートは小規模物件が多く、自主管理や簡易的な管理委託で済むケースが多く見られます。費用面でも手間の面でも負担が軽い反面、構造面からみても老朽化が早く、こまめな修繕や空室対策が求められる場面が増えます。
これに対し、マンションは管理会社による共用部の定期清掃や修繕計画などが整っており、オーナーの手を煩わせずに維持できる安心感があります。その一方で、管理費や修繕積立金といったランニングコストは高く、キャッシュフローに与える影響も無視できません。また、共有住宅として住んでいる人数も多くなりがちなので、エレベータや宅配ボックスなど、マンションの方が設備に費用がかかる傾向も見逃せません。
管理の手間を軽減したいのか、それともコスト重視で自ら手を動かせるのかが、判断ポイントになります。
2、アパート投資のメリット・デメリット

アパート投資は、初期費用が比較的少なく、高い利回りが狙える点で多くの投資家に注目されています。しかし、その分リスクもあり、特に空室や修繕費の面では注意が必要です。ここではアパート投資のメリットとデメリットを深掘りし、成功するために意識すべき点を整理していきます。
(1)高利回りを狙える点が魅力
アパートは建築コストや購入価格が低く抑えられるため、表面利回りが高く出やすいというメリットがあります。特に土地代が安い地方エリアでは、少ない資金で投資を始めやすく、初期費用対効果の高い投資先となることもあります。さらに、金融機関によってはアパートローンの融資条件が緩やかな場合もあり、自己資金を抑えて高いレバレッジを効かせた運用も可能です。ただし、高利回り=高収益とは限らず、空室・修繕・滞納などのリスクを含めた実質利回りの見極めが重要です。表面利回りの数字に惑わされず、綿密なキャッシュフローシミュレーションを行うことが成功への鍵です。
(2)空室リスクと修繕負担の注意点
アパート投資では空室リスクへの対策が非常に重要です。特に築年数の経過とともに競争力が低下し、空室期間が長引けば収益に大きな影響を及ぼします。また、木造アパートは耐久年数が短いため、外壁や屋根、水回りなどの修繕頻度も高くなりがちです。空室と修繕が同時に発生すると、想定以上の支出が発生し、キャッシュフローが赤字になるリスクもあります。これを回避するには、物件選定の段階でエリアの需要を見極め、将来的なリフォーム費用も含めた保守的な資金計画が不可欠です。安易な高利回り物件に飛びつかず、長期的な視点で管理と改善を継続できる体制を整えておくことが求められます。
(3)売却時の価格下落リスク
アパートは築年数の経過とともに評価額が急激に下がる傾向があります。特に木造アパートは法定耐用年数が22年と短く、それを超えると建物の評価はゼロに近づき、融資評価も大きく落ち込みます。その結果、売却時には「土地値のみ」として評価され、思ったよりも安い価格でしか売れないこともあります。加えて、物件の収益力が低下していると、買い手がつかないケースもあります。こうしたリスクに備えるには、購入時から「築浅で短期売却する」「再建築しやすい立地を選ぶ」など、出口戦略を明確にしておく必要があります。単に購入時の利回りだけでなく、将来の価値維持を見据えた判断が大切です。
3、マンション投資のメリット・デメリット

マンション投資は資産性の高さや安定収入が魅力ですが、初期費用やランニングコストの負担が大きいため、綿密な資金計画が不可欠です。ここではマンション投資における主なメリットと注意点を整理し、成功のポイントを探っていきます。
(1)資産価値の維持と売却のしやすさ
マンションはRC造など耐久性の高い構造であるうえ、都市部や駅近など立地条件の良い物件が多く、築年数が経っても資産価値を保ちやすい点が魅力です。特にブランド力のある物件や管理体制が良好なマンションは、売却時にも高い評価を得やすく、流動性の高さが特徴です。購入検討者も多いため、売却までのスピードや価格交渉の有利性にもつながります。投資目的だけでなく、将来的な自宅利用や相続対策としても選ばれやすく、長期的に保有しやすい資産といえます。適切な物件を選び、定期的なメンテナンスを実施することで、出口戦略の幅も広がるでしょう。
(2)安定収入と長期入居が見込める
マンションはファミリー層や法人契約による長期入居者が多いため、空室リスクが低く、収益が安定しやすいのが特徴です。共用部の管理や設備対応も管理会社に任せられるため、入居者満足度も高まり、長期滞在に繋がるケースが多くあります。特に都市部の物件は、転勤族や企業契約による需要が安定しており、賃料水準も高めに設定できるため、キャッシュフローの予測もしやすくなります。短期的な利回りよりも、着実な収益を得たい投資家にとっては非常に相性の良い選択肢です。また、長期保有によってインフレに強い資産形成が可能になる点も見逃せません。
(3)初期費用と維持費の負担が重い
マンション投資は高額な物件価格に加え、管理費や修繕積立金などの毎月の固定コストが発生するため、初期投資とランニングコストの両面で資金負担が大きくなります。さらに、管理組合の決定に従う必要があるため、自由度の低さに戸惑うオーナーも少なくありません。加えて、将来的に大規模修繕が必要となる際には、追加負担が発生する可能性もあります。物件によっては修繕積立金が不足しているケースもあるため、購入前の調査が欠かせません。マンション投資は堅実な収益と資産形成が期待できますが、資金計画や運用管理の視野を広く持てる中級者〜上級者向けの投資と言えるでしょう。
まとめ
アパートとマンションは、構造・立地・運用コスト・ターゲット層といった点で大きく異なり、それぞれに異なる魅力とリスクがあります。アパートは高利回りを狙いやすい反面、空室や修繕リスクへの対策が必要です。一方、マンションは安定収入と資産価値を重視する投資家に適していますが、高い初期投資が求められます。不動産投資を成功させるためには、表面的な利回りだけでなく、自分の投資目的や許容できるリスクを明確にしたうえで、最適な物件タイプを選択することが欠かせません。
高野 友樹(不動産コンサルタント)
最新記事 by 高野 友樹(不動産コンサルタント) (全て見る)
- 【どっちが有利?アパートvsマンション投資】 特徴・注意点を解説 - 2025年12月8日
- 【掲載のお知らせ】弊社代表監修記事が「GMO不動産査定」へ掲載されました。 - 2025年10月21日
- 【掲載のお知らせ】不動産情報サイト「goo住宅・不動産」様へ弊社代表監修記事が掲載されました。 - 2025年6月2日